6月 28日 まだジャズ喫茶やレコードバーに行ったことのない人へ
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by epulor
いかにスピーカーにお金をかけ、アンプとの相性に頭を悩ませ、手間ひまかけてレコードで流し、素晴らしい音質にしたところで、結局、生演奏にはかなわない。でしょ?
アナログレコード
たまにそういった主旨のこと言う人がいる。確かにそうかもしれない。もしチック・コリアのライブを聴けるのだとしたら、それを断ってまで録音されたものを進んで聴きたがる人はいないと思う。ライブで味わう音楽が最高に贅沢だということに異論はない。
問題の一つは、チック・コリアのライブを、もう聴くことができないとうことだ。マイルス・デイヴィスもビートルズも、残念なことに、もう、そのライブを僕たちは味わうことができない。
仮に実存するアーティストであっても、録音された演奏をもう一度再現することも難しいかもしれない。キーズジャレットのケルンズコンサートでは、本人の調子も、会場の準備も万全とは程遠かった。しかし、そこでの奇跡的なめぐり合わせによって、そのライブ録音は彼の最高傑作の一つだとも言われるようになる。音楽好きなら、再現できないパフォーマンスこそ、何度も聴きたくなってしまうのではないだろうか。
録音が残るものであったら、自分の家で聴けばいいという人もいるだろう。僕に言わせると、その人はおそらく、素晴らしい音響で聴くと音楽が別物になるという実体験をまだしたことがない、ということではないだろうか。一定以上の音質で流れる音楽を聴くと、視聴というよりは、全身で感じる音楽体験になるのだ。
オスカー・ピーターソンのピアノトリオのライブは録音が良くて有名だが、これをいい音質で聴くと、デジタル音源で聴くものとは全く別の音楽体験になる。いままで感じなかった音の奥行き、生まれる臨場感によって、聴き慣れた音楽でさえ、心を揺さぶるほどに美しくなるのだ。
運良く、素晴らしいオーディオセットとレコードを何枚も持っている人ならどうだろうか。その人達はもうライブ以外で外に音楽を聴きにでかける必要はないのだろうか。
もしかすると、僕もその恵まれた人の一人かもしれない。僕は、epulorにいけさえすれば、それなりの枚数のレコードを、epulorの音響で音楽を聴くことができる。ひとつの結論を提示するとすれば、僕は、未だにレコードバーに行っている。なぜなら、音楽を流す人が一枚一枚アナログレコードを選び、聴いたことのない曲を流したり、曲の流れで雰囲気をコントロールするパフォーマンスを味わいたいからだ。
おもてなし、というのは、必ずしも笑顔で手取り足取りサポートすることではないと思う。人や空気にあわせてアナログレコードを変えていくというは、他では味わえないパフォーマンスであり、それがその店のおもてなしであると僕は思っている。
僕は、一人でも多くの音楽好きが、その体験をしてもらえたらと思っている。そして、できれば、自分の好きなお気に入りのジャズ喫茶やレコードバーを一つでも見つけてもらえたら嬉しい。