ヴァンナチュールがワインの楽しみ方にもたらした文化的スタイルのような何か

ヴァンナチュールはvin(=ワイン)nature(=自然)ということで、ナチュラルワイン、 自然派ワインのことです。ナチュールとか言ったりもしますね。ビオワインは化学肥料や除草剤を用いないビオロジック農法・ビオディナミ農法で栽培されたぶどうのワインです。ヴァンナチュールはぶどうの栽培だけでなく、造酒プロセスにおいても酸化防止剤として亜硫酸塩を使わないなど色々と制限してます。文字通り自然派ですね。

ただ、ヴァンナチュールは、単純にオーガニックを好む人が飲むワインとしてでなく、まったく独立した存在感を持ってます。”ナチュラル”な”ワイン”ではなく”ナチュラルワイン”なのです。

ヴァンナチュール

ナチュラルワイン

 

ヴァンナチュールの父とも言われているマルセル・ラピエールとかフィリップ・パカレがそのように意図していたかは詳しくわかりませんが、ヴァンナチュールはフランスワインの階級主義的なあり方に対するアンチテーゼとして機能したように思います。

ヴァンナチュールのエチケットはクラシックなワインと比べて、ポップで遊び心のあるエチケットが多く、外観からナチュールだとすぐわかったりします。また、味そのものも、スキンコンタクトしたり無濾過だったりするので、野性的というか独特のクセがあり、上品というよりも、おもしろいワインが多いです。ヴァンナチュールのマニアの中にはとにかくクセの強いものを追い求めたりする人もいますが、初めての人がそれを飲んだらワインとは思えず、きっと驚いてしまうと思います。

あと、ヴァンナチュールには、独特のスタイルのようなものがあります。仕立てのいいスーツを着たビジネスマンが、ドレッシーな美女と六本木あたりの高級フレンチやイタリアンに行き、マリアージュとして合わせるワインを黒いスーツを着たソムリエとスマートに話すという、クラッシクなかっこいいワインの付き合い方とは一線を画した別のスタイルですね。

なんかクリエーターっぽく髭をはやしていて、ラフでおしゃれな服を着ているイケてる男性が、ショートカットの同じくラフな女の子と一緒にフグレンの浅煎りのコーヒーを飲みながら、歩いて代々木上原のレストランに行き、トッド・ラングレンのレコードが流れるミニマルな内装のレストランで仲間と一緒に気軽にナチュラルワインを楽しむと言った感じです。

僕もヴァンナチュールが好きで、最近は特に好んで飲むようになっていますが、僕がリスペクトしている部分として重要なのが、やはり一つのスタイルを確立したという所です。ものづくりであれ、デザインであれ、ベンチマークの何かを基準にして、どの部分をどの程度移動したポジションニングをするか、というのは、その分野の構造を適切に理解する人であれば、ある程度設計可能なのかもしれません。それに対して、新たなスタイルを提示して、それを確立させるというのは、全く別物です。最近ややブームになっているのも、ヴァンナチュールのもつ、文化的スタイルのような何かが、人をひきつけてるという部分もあるのかと思っています。

ということで、まだナチュラルワインを試してない方、試したけどクセが苦手だという人も、一度ソフトなものから試してみて、そのワインのスタイルを楽しんでみませんか?