最近、飲みすぎているせいか太り気味だ。

最近、飲みすぎているせいか太り気味だ。社会人になって最も太っているかもしれない。

 

ここらでちゃんと気合を入れて運動するべきかもしれないのだが、ライザップの広告に出てくるような細マッチョの体になった自分を想像すると、それはそれで違和感を感じるのだった。この種の違和感は、必要性を超えた何かをもつ動機がどこにあるかに考えが及んでしまう、というところに起因するのだと思う。とりたてて激しいスポーツをしない僕にとってはあきらかに不要な体型だった。

だが、そんなことを考えていると、細マッチョを実現した未来の僕が、今の僕をみて嘲笑うのだった。

「君はいろんな言い訳をしながら、現状の自分を否定することに耐えられないだけさ。あるいは単純に努力することを避けているのかもしれない。いずれにせよ、結果は同じ。現状に満足したらそれで君の成長の終わりだね。そしてそれは精神的な自殺を意味する。君もよく知るように向上心を失った人間に未来はないのさ。君の未来は君自身の判断と行動に委ねられている。」

「言っている意味はよくわかるよ。でも、論点は進むべき方向性なんだと思う。僕にとって、細マッチョがただしい方向なのかどうかわからないんだ。」

「その迷い自体が言い訳なのさ。より洗練された言い訳を探そうとして、一体何になる?君の考える以上に世界はシンプルなんだよ。細マッチョは善。それだけさ。他の次元があるように見えたとしたら、それは君が現状を肯定するために都合よく作り出した世界観にすぎない。」

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。僕にはわからないんだ。やりたくないことからただ逃れようとしているのか、それとも本当に方向性に違和感を感じているのか。どうやってそれを区別していいか僕自身にはさっぱりわからないよ。僕はただ違和感を感じるんだ。今の僕に対しても、そして君に対してもね。」

彼が僕に語ることと、僕が彼に語ることとには、切り裂くような漆黒の隔たりがあり、それはまるで絶望的に深い溝のように横たわっていた。その闇はどこまでも深く、そこに落ちたものは二度と戻ってこないのだった。